映画でクラシック鑑賞:オペラ・魔笛

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以前の記事でもこの夏やりたいこととしてリストアップしていた映画「魔笛」。7月14日からずっとタイミングを計って、やっと観ることができました。^^
ご存じのとおり「魔笛は」モーツアルトのオペラのなかでも人気が高く、公演回数も多い作品です。今回の映画化は作品の魅力をクラシックファン以外にも広く知ってもらいたいとの、芸術界のパトロンで特にオペラ歌手への助成で有名なピーター・ムーア財団の意向により実現したものだそうです。

監督のブラナー(役者さんとしても有名です)はオペラに詳しいわけではなく、この作品のために製作期間の3年半モーツアルト漬けになったとのこと。だからこそオペラ界の常識に捉われず、映画ならではの表現を実現できたのかもしれませんね。時代背景を大胆に変え、現代的なビジュアル処理を駆使しながらもオリジナルの「魔笛」が持つロマンス、情熱、物語の力、そして美しい音楽を伝えることができたのではないかと思います。

全曲通し、休憩なし(当たり前か)なのでやや疲れることは否めませんが、クラシックが好きで、いつかオペラの「魔笛」を見に行きたいという方にはお勧めです。序曲、鳥刺しの歌、夜の女王のアリア、パ・パ・パなどは詳しくなくとも聞き覚えがあると思います。クラシックに縁がない、という方は抜粋版でも試聴でもちょっと聞いておくとより楽しめると思います。

封切りから2週間が経過し、いつもは仕事をしている平日の時間帯だというのに、日比谷のシャンテ・シネは満席でした。仕事が終わってからの回だったらチケット取れなさそう。。上映館が少ないせいか、この夏の上演稼働率はポケモンに続いてナンバー2だとか。ご興味ある方はお早めに。^^

と、言うわけで、オリジナルオペラを見たこともない管理人の感想ですが、宜しければつづきからどうぞ。大きなネタバレは避けたつもりですが、これから観に行く!という人は鑑賞後に読んで、ぜひ感想を教えてください。^^
今回の大きな試みの一つは英語の歌詞で歌っているということ。コアなオペラファンからは減点されそうなポイントですが、ミュージカル映画だと思えばセリフと歌の言葉が違うということはあり得ないわけで。。全編ドイツ語のセリフと歌詞というよりは万人受けする選択ですよね。管理人としては英語の歌詞と字幕付きは、ドイツ語のオリジナルをCDで聴くよりは格段に理解できて良かったです。後で調べるとピーター・ムーア財団は英語訳でオペラの普及を行うことを一つの目的としているので、映画化には英語訳が前提だったみたいです。(^^;

最初の映像は第一次世界大戦の最前線。野花の咲く牧歌的な風景と塹壕の中の厳しさのコントラストが印象的。兵士のタミーノは野花を摘んで手帳に挟む心優しい青年として現れます。心躍るような序曲が鳴るなか、戦闘が開始されます。火を噴く鉄砲や服を切り裂く有刺鉄線などのアナクロな武器が痛そうです。

カメラは野原を駆け抜けたり、塹壕の中を走ったり、どこからがCGか分らないほど技術を駆使していますが、ファンタジー感とナチュラルな色彩が映像全体をまとめています。キャストはすべてオペラ歌手なので、演技の勝手が違い大変だったようですが、そこはプロ。映画らしい自然な演技に仕上がっています。

コンロンが快活に鳴らす音楽は、このオペラにぴったりだと思いました。映画化にあたっての表現テーマは愛と平和なのでしょうが、あまり崇高に走りすぎず、あくまで庶民の視点を保っているところがモーツアルト的に感じました。

激しい戦闘に倒れたタミーノを助けたのは3人の侍女。ナイチンゲールか尼僧か天使かというような白く輝く衣装をまとい、空を舞います。そんなストイックな衣装だというのにタミーノの純粋さを自分のものにしようとお互いけん制したり、ちょっと誘惑しようとしたり。見た人は分かると思いますが、3人のチャーミングさに笑ってしまうシーンがあります。^^

気がついたタミーノが出会ったパパゲーノは軽薄で猥雑ながら、夢見がちな愛すべきキャラクター。妄想シーンは楽しいの一言で、ブロードウェイ出身のベン・デイヴィスがはまり役です。レ・ミゼラブルのキャストを4年つとめ、初めてのオペラ出演、ラ・ボエームでトニー賞を受賞。魔笛が二つ目のオペラ出演とは思えませんが、それだけブロードウェイは層が厚いんですね。真面目で誠実なタミーノとの凸凹コンビでパミーナ救出に乗り出すわけですが、パパゲーノの色彩豊かさがタミーノの誠実さを際立たせる訳ですから得な役です。

タミーノに娘の救出を持ちかける夜の女王はロシアを代表するソプラノ、リューボフ・ペトロヴァが演じます。ヴィジュアル的にも迫力満点で、コロラトゥーラ・ソプラノの面目を発揮。ナチっぽい雰囲気がはまり過ぎて、これからCDを聞くたびに戦車と口もとのアップを思い出すことでしょう。夜の女王が登場すると、CGも悪ノリしてしまうようで、このままの魔女キャラでバットマンとかの悪役を演じられそうです。大風車でのシーンも圧巻です。

キャストで一番魅力的だったのはドイツ出身で世界屈指のバス歌手ルネ・ペーパの演ずるザラストロ。想像していたより若いザラストロでしたが、ザルツブルグ音楽祭で23歳という最年少でザラストロを演じているとのこと。グラミー賞のオペラ部門を2回受賞した実力者です。カメラに向かっての演技は初めてとは思えない、誠実そうな指導者像にタミーノならずとも一目で信頼してしまうことでしょう。(笑)

ところでザラストロがパミーノをさらった理由は映画では伝わらなかったのですが、まあオペラでも同じでしょう。夜の女王の最後のシーンが怪しいとは思いましたが。鑑賞後、英文公式のキャラ紹介にあっさり書かれているのを見つけて拍子抜けしました。(^^;

ところでタミーノは運命に翻弄されながら、目を大きく見開いている顔が印象的。2005年プラシド・ドミンゴ世界オペラコンクール受賞というジョセフ・カイザーが誠実でピュアな青年の熱情を演じます。善と悪が分かりにくい世の中で、何を信じるべきか葛藤する青年に観客は感情移入するはずです。数々の試練を潜り抜け、愛を勝ち取るタミーノを甘い声のカイザーが好演します。

パミーナのエイミー・カーソンは英国クラシック界の新星。難しい曲もきれいに歌いこなしますが、これぞ!という印象がないのは割の悪い役ですね。ビジュアル的な花でありながら、逃げたり、追い詰められたりしてばかりですし。(^^;彩子ちゃんがパミーナより夜の女王をやりたかった訳が良く分かりました。(笑)

18歳の方のパパゲーナ(笑)、シルヴィア・モイはノルウェイの新星オペラ歌手。いかにもモーツアルト的な誘って逃げてゆく愛らしい姿と明るい声がパパゲーナにぴったり。出番は少ないけれど、予告編にも使われているパ・パ・パがとても素敵です。

テノールの悪役、モノスタトスのトム・ランドルはベルリン国際劇場などに出演し、メインキャストでは唯一映画出演の経験も豊富な。こういう人が脇を固めると芝居が締まる感じがします。二枚舌の悪い奴なんですが、肌の色のせいか!と歌うところはちょっと切なかったです。

以上キャスト視点の感想でした。詳しいストーリーが知りたい方は日本の公式サイトが丁寧に教えてくれますので、そちらをどうぞ。(手抜きだな)

ところでオペラの魔笛ですか?いつか絶対観に行きます!

【題名】魔笛
【監督】ケネス・プラナー
【脚本】ケネス・プラナー、スティーヴン・フライ
【指揮】ジェイムズ・コンロン
【楽団】ヨーロッパ室内楽管弦楽団
【出演】<ザラストロ役>ルネ・パーペ(Bas)
    <夜の女王役>リューボフ・ペトロヴァ(Sop)
    <タミーノ役>ジョセフ・カイザー(Ten)
    <パミーナ役>エイミー・カーソン(Sop)
    <パパゲーノ役>ベン・デイヴィス(Bar)
    <パパゲーナ役>シルヴィア・モイ(Sop)
    <モノスタトス役>トム・ランドル(Ten)
    <第一の侍女役>テゥタ・コッコ(Sop)
    <第二の侍女役>ルイーズ・カリナン(Mes)
    <第三の侍女役>キム=マリー・ウッドハウス(Sop)  ほか

Magic Flue公式HP(英語のみ)
こちらの予告編を見れば映画の雰囲気がかなり伝わると思います。
使われている曲を聞いたり、オケをバックにフルートを演奏してみたり、出演者のプロフィールをみたり、宝探しのようで楽しいサイトです。
http://www.magicflutefilm.com

魔笛公式HP(日本向け)
上のサイトとは全く違う形でいろんな情報が見られます。
動画で見られる青島氏のトークショーは爆笑モノ。
http://www.mateki.jp/

関連タグ : 魔笛,

コメント
この記事へのコメント
暑いか・寒いか。夏バテか冷房病のどちらか!と言われているようです。(^^;ちなみに今日はバテました。

映画・魔笛は純粋オペラ主義的なクラシックマニアには物足りないだろうし(まず英語というところで×でしょう)、クラシックを聴いたことのない人にはつらい(オペラ22曲ですから)けど、その中間の人には楽しめるのではないでしょうか。生で観る前の導入にはお勧めですよ。

szellさんはお詳しいから物足りないかもしれませんが。。もし、お暇な時にでも見ることがあれば感想を聞かせてください。^^
2007/08/11(土) 23:27 | URL | ろめいん #VWFaYlLU[ 編集]
映画「魔笛」、興味の欠片も無かったのですが、ろめいんさんのレポートを読んで、観に行こうかなぁ、と考えてます。

クラシックって、博物館に入っているのでは存在価値が無く、今に生きてこそ価値があると思います。
その意味では、新たなチャレンジは大歓迎。
これで興味を持って、新国立劇場で生を観る人が出て、クラシックFanになるかもしれませんもんね。

有楽町は、タマニランチで足を伸ばしたりするだけに、お盆で仕事も暇になるし、ちょっと迷ってます。

興味深いレポートを有難うございました。
2007/08/11(土) 14:04 | URL | szell #-[ 編集]
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