産地直送のマタイ受難曲:聖トーマス教会合唱団&ゲヴァントハウス管弦楽団

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先週は高熱を出して、すぐに回復したものの仕事他で怒涛のように忙しかった管理人。1週間分の記憶の記憶がほぼ飛んでます。(笑)こんな風に神経が張り詰めている時に聴きたいのは、やはりバッハ。今週はバッハが音楽監督(カントール)をつとめていた聖トーマス教会合唱団がゲヴァントハウス管弦楽団と来日しているので、即行くことに決定。

演目はマタイ受難曲は休憩ありの3時間10分、ミサ曲ロ短調は休憩なしの1時間50分とどちらも長丁場でしたが、好きな曲が多く、一度は生で聴きたかったマタイに挑戦することにしました。

サントリーホールがライプツィヒの教会堂に変わったようなコンサートのあと、少なくとも家までの帰り道の間は心の平安を味わうことができました。有難くも楽しかったマタイ受難曲の感想は続きからどうぞ。


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歴史をおさらいしてみると、バッハがライプツィヒ・聖トーマス教会合唱団のカントールだったのは1723~1750年、そして初演から100年後にマタイ受難曲を復活させたメンデルスゾーンがつとめたのがゲヴァントハウス管弦楽団の音楽監督(カペルマイスター)。合唱団は800年近い歴史があり、オケの方は250年前に設立された世界最古のコンサート・オーケストラなんだそうです。古くからライプツィヒにあり、バッハともゆかりの深い二つの団体は150年前から共演しているそうで、いろんな意味で歴史の重みを感じます。

マタイ受難曲にはチラシには初期稿使用と書かれていましたが、パンフでは一般的な後期稿に変更されていました。とにかく、休憩を挟むとはいえ3時間以上、68曲ですから、聴く方も歌う方も演奏する方も大変ですが、歴史小説を読むようなドラマチックさにすっかり引き込まれました。

合唱団には9歳から18歳の青年が所属しているとのことですが、小学校低学年にしか見えない小さな男の子もいて、そのいたいけな姿に少年合唱団をひいきにしているおば様方の胸キュンが少し分かりました。腐った私は寄宿舎からギムナジウムに通う生活に好奇心が湧いたりしますが、そっちへの想像はなんとか抑えて(笑)清らかな心で聴くことに。

天使の歌声というと陳腐ですが、清らかで美しい合唱に、言葉がまっすぐ胸に伝わる気がします。分からないドイツ語まで伝わったように錯覚するほど。(笑)長年教会が少年合唱をメインに使っていた理由はそんなところにあるような気がしてしまいました。

指揮者は主に合唱に指示をしていましたが、それもそのはず、指揮のビラーは聖トーマス教会合唱団のカントールで、ゲヴァントハウスの指揮者ではありません。本人もこの合唱団の出身で合唱指導と管弦楽指揮の勉強をしているので、楽器の指揮ができないわけではないのですが、どうしても歌唱指導が中心になるようです。

6名のソリストはさすがに物語を熟知していて、ツボを押さえた歌唱で物語を描きだします。パンフによると男性4人のうち二人は聖トーマス教会合唱団出身、一人はシュトゥットガルトの賛美歌合唱団出身、もう一人はドレスデンの教会音楽学校とライプツィヒの音楽学校出身と、技術も理解度も文句なし。座席の角度のせいで男性歌手はあまりよく見えなかったのですが、福音史家のテノールの語りが物語を豊かに彩っていました。

合唱団からもユダをはじめ7名がソロを歌いましたが、堂々として安定感のある歌いっぷりです。歌い終わった後に仲間からひそかに「グッジョブ」の視線が送られるところは普通の少年達と変わりないのですが。(笑)この中から何年か後にはソリストとして合唱団と共演する歌手が生まれるなるかもしれませんね。^^

女性のソリストではこの合唱団のレコーディングやツアーにも参加しているソプラノのウテ・ゼルビッヒが印象的でした。Blute nut, du liebes Herz! 「血を流せ、この心よ」などのアリアが凛として素敵でした。アルトは、初め音の立ち上がりがやや弱かったのですが、だんだん調子が良くなってきたようです。宗教曲なのでお芝居もなく、感情も表情も抑えていますが、それでも生で聴くとドラマ性もメッセージもダイレクトに伝わります。

演奏の方は合唱とオーケストラが共に2群に分かれています。左のオケのコンマスは淡々としていると思えば、左のコンマスは力強く歌とからみ、そのあたりの違いも興味深かったです。ピリオド奏法で宗教曲だから一曲ずつは淡々と終わりますが、これだけの曲を存分にヴィブラートをかけて情感たっぷりにやったら、演奏時間が4時間位になりそうと余計な事を考えました。(^^;

ソロの楽器ではバロックらしくオーボエやファゴットが目立ち、真ん中でヴィオラ・ダ・ガンバが盛大に弾いていたのが印象的。少ない人数でいろんな楽器が入れ替わりで合唱を支えているのが目で見えるのも生演奏のメリットですね。

今回のコンサートは左右に日本語の字幕が出ますので、受難の物語を良く知らなくても大丈夫ではありますが、二行しかないので文字が詰まっていて読むのに結構忙しい。とはいえ、パンフの歌詞を読みながら聴くのはもっと忙しいので初心者にはベストの選択だと思いました。帰ってからパンフとCDと読めないドイツ語と格闘し、毎度なばらもう少し予習しておけば良かったと後悔した管理人です。

第一部では受難の暗示とこれから起こることのイエスの預言、ユダの裏切り、最後の晩餐、ゲッセマネの祈りから捕えられるところまでが描かれます。ミッションスクールなどで何度となく教えられたこの場面ですが、改めてイエスの人間としての苦悩と悲しみが伝わってきました。以下勝手な解釈が続きますが、ルーテル教の宗教的な解釈については良く知りませんのでご容赦ください。

第二部では裁きの場で申し開きをせずに耐えるイエス、ペテロの否定、ユダの自殺、民衆の意思による死刑の決定、ゴルゴタの丘での絶、そして復活の暗示で終わります。聴いている身としてはある時は悲しむ乙女たち、イエスを裏切る弟子たち、すぐに扇動される愚かな民衆、あるいは体制を守る大祭司や保身に回るピラトの気持ちになりながら物語を追います。有難い説教とエンターティメントを美しい音楽に包んで普通の人々に届けたバッハの天才と、伝えたかった信仰のメッセージが少し理解できたような気がします。

マタイ受難曲で最も有名なアリアErbarme dich,「憐れみたまえ」は皆様も聞かれたことがあると思います。ここではヴァイオリンは聴きなれた、泣かせるような演奏ではなくやや淡々としており、アルトはこれから起こる悲劇を暗示するような抑えた悲しみを歌うのが印象的。唯一聴き取れるMein Gott「わが神」への叫びがまっすぐに伝わりました。

合唱のLass ihm kreuzigen!「十字架につけろ」では民衆の容赦のない言葉に胸が痛くなりました。そのあとの柔らかなファゴットに支えられたソプラノ・レチターヴォ、清らかなフルートと絡むAus Liebe「愛ゆえに」のアリアの痛々しい美しさに寄り添い、自分はイエスを死に追い込んだ民衆ではなく、死を悼む側に立ちたいという気持ちが生まれ、これがバッハの意図なのでは思います。

民衆の十字架につけろという要求は止まず、ピラトが責任を逃れ、民衆は「その血の責任は我らと我らの子孫にある」と答えるあたりがずしんと来ました。裏切ったのはユダだけではなく、皆同じなのだと。そんな我らを許し、救ってくれた人としてイエスは描かれます。十字架に至る場面に静かで美しいアルトのアリアやヴィオラ・ダ・ガンバを伴うバスアリアが民衆の嘲笑と交互に現れ、嘆きのアリアのあと、木管・アルト・合唱が絡むアリアが優しく響き、死に到ります。何度か現れているメロディーで合唱が死を悼み、復活の描写が描かれ、ようやく人々は「本当にこの人は神の子だった」と悟ります。

個人的にとても好きなアリア、Mache dich mein Herze, rein, 「わが心よ、自分を浄めなさい」が柔らかなバスで歌われます。復活が成就したからなのか、許されたからなのかは分かりませんが、気持ちが安らかに落ち着きます。

各パートのレチタティーヴォにつづき、最後の合唱Wir setzen uns mit Tranen nieder「われら涙してひざまづき」では感情が一杯になり終了してもすぐに拍手が出てきませんでした。ありがちなフライングの拍手がなかったので、一瞬の無音のなかで余韻に浸る事が出来て良かったです。その後は夜遅くまで頑張った子供たちを始め、ステージの皆に惜しみなく拍手を送りました。

「無人島に持って行く一枚のCD」に良く選ばれるマタイ受難曲ですが、私なら対訳歌詞の本と、ドイツ語の辞書もぜひ一緒に持って行きたいです。ついでに平均律クラビーアの楽譜と鍵盤を持って行ったら、私でもいつか弾けるようになるでしょうか?別に無人島に行きたい訳ではありませんが。(笑)


J.S.Bach: Matthaus Passion BWV244b
Thomanerchor & Gewandhausorchester zu Leipzig
Thomaskantor: Prof. Georg Christoph Biller

J.S.バッハ:マタイ受難曲 BWV.244
指揮:ゲオルク・クリストフ・ビラー
福音史家・テノール:マルティン・ペッツォルト 
ソプラノ:ウテ・ゼルビッヒ 
アルト:エリザベート・ヴィルケ 
テノール:アンドレアス・ヴェラー 
バス:マティアス・ヴァイヒェルト/ゴットホルト・シュヴァルツ 
管弦楽:ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 
合唱:ライプツィヒ聖トーマス教会合唱団
2008年3月7日 サントリーホール


tomanerchor.jpg



聖トーマス教会合唱団の清らかな歌声はここで聴けます。ドイツ語ですが、一番下に試聴ボタンがあり、1曲まるごと聴けます。
So ist mein Jesus nun gefangen.「こうして私のイエスは捕えられた」

http://www.rondeau.de/webbusiness/query.php?cp_sid=352938c8633&cp_tpl=main

聖トーマス教会合唱団の公式HPはこちら
http://www.leipzig-online.de/thomanerchor/
コメント
この記事へのコメント
はーもに~♪さん、ども!

みなとみらいにいらしてたんですね!あの変形せーラー襟は来ますよね。(笑)サントリーホールではアンコールの時に一番小さい黒髪の子と、金髪巻き毛ちゃんがあいさつjに出てきて、拍手も盛り上がりました。^^ひそかにあのキャラに似てるとか、これの小さい頃だとか、チェックしてました。(笑)

ソロはバスが見えなかったせいか、声の立ち上がりが弱い気がしたり、アルトも変化に乏しい所がありましたが、全体では手堅くまとめてましたね。聞きなれたアリアではついドラマチックさを期待しちゃいますが、全曲のバランスは好みでした。私ももう少し悲劇っぽいのを想像していので、ビラーさんの伝えたいのは救いと復活なんだと理解しました。

聖トーマス教会で彼らの合唱を一度聴いてみたいとおもっていたら、はーもに~♪さんは歌うんですね!すごーい!!本場の響きはどうだったか教えてくださいね!トーマナーとは一緒じゃないのがやや残念でしたが。(そこかい)
2008/03/12(水) 00:35 | URL | ろめいん #VWFaYlLU[ 編集]
少年合唱って混成とは違う良さがありますね。コンサートで真剣に聞いたせいか、そのあとCDが前より細部が聴こえ、音楽が伝わるんです。次回も絶対行こうと今から決めてます。^^

オケは合唱を盛り立てるように、基本的には手堅くやってましたが、ちょっとしたソロでは「きれいに弾くから感動して」ではない、一人ひとりのこだわりを感じました。この曲は彼らにとって、身近にあって特別な曲なのではないかと思います。

それにしても、szellさんの描写から楽器を弾いているおイモさんたちを想像してしまいました。(笑)シャイ―と一緒ならおイモもピカピカになりそうですが、一緒の来日は先になりそうですね。シャイ―は聞き逃したっきりなので、この組み合わせも是非聴きたいです。
2008/03/12(水) 00:16 | URL | ろめいん #VWFaYlLU[ 編集]
私も3月1日のみなとみらいホールのマタイ、聴きに行きました♪

トマーナー(聖トーマス教会合唱団)、すばらしかった!♪
ウィーン少年合唱団より、いいかもしれない!(5月のウィーン少年合唱団の演奏会で聴き比べ♪)

私も(?)、トマーナーが入場する際、「11月のギムナジウム」、「トーマの心臓」を思い浮かべちゃいました。^m^
1曲目の「導入合唱」の時、真ん中で歌っていたクルクル巻き毛の子なんか「エーリク?」なんちて(爆)
ピラトの奥さん役の子、美しかったわぁ♡

「われら涙ながして膝まづき」だけは、ちょっとイメージと違ったけど…ビラーさんて、かなり「強く」振るのよね。(ロ短調もそうだけど)
もっと、どうしようもない悲しみが滲みでている方が好みなんだけどな…

オケに詳しくないので、見たこともないような楽器が次々とソロをするのも、楽しかったです。ヴィオラ・ダ・ガンバも、ちょっと変わってたよね? フルートも木管だったし…オーボエも遠かったせいか、金色に見えたわ…

ウチの合唱団、昨年はビラー氏の指揮でロ短調、歌うはずだったんだけど、ビラー氏の事故で、残念でした。
今年は夏にドイツの聖トーマス教会の日曜朝の礼拝でトマーナーの代わりに(?)歌わせてもらうのよ。
あと、シュッツガルトの教会でも♪

楽しみです。がんばって勉強しなくっちゃo(^^)o
2008/03/11(火) 12:00 | URL | はーもに~♪ #N2s76zxo[ 編集]
大変素晴らしいコンサートだったそうですね。
僕も友人から、電話が掛かってきて、来れば良かったのに、と言われてました。

特に合唱を絶賛してました。

芋っぽくて、ゴツゴツしてて、暗くて、泥臭くて、洗練とか華麗とか、お洒落とか、微塵も感じさせないゲバントハス管弦楽団を、コンセルトヘボウを見る影もなく変貌させたシャイーが、どう変えてるか、とっても楽しみでしたが・・・。(^^)
こうは書いてますが、ゲバントハウス管弦楽団は、オケとして来日する毎に聞いてますし、シャイーも来日ごとに聴いてるだけでなく、来日全プログラムを聴きに行ったりしてます。
少人数でのバッハの伴奏には卒がないでしょうね。
2008/03/11(火) 02:27 | URL | szell #-[ 編集]
nomomaniaさん、こんばんは!

2月の来日中止にはがっかりされた方も多かったみたいですね。今回のマタイ受難曲とロ短調ミサ曲は合唱団のカントールが指揮したので、大丈夫だったんです。
シャイ―さんは一度聴いてみたい指揮者なので、元気になってまた来日してほしいですね。カジモトによると2年後になるみたいですが。。(^^;
2008/03/10(月) 23:28 | URL | ろめいん #VWFaYlLU[ 編集]
え~っ、ゲヴァントハウス管弦楽団来てたんですか?
私は、2月3日の切符を1年前から買って楽しみにしていたのに常任指揮者のシャイーが病気で公演がキャンセルされて、てっきり来ないかと思っていました。
2008/03/10(月) 21:23 | URL | nomomania #-[ 編集]
なつさんこんばんは!

マタイ受難曲は知らず知らず聴いている曲も多いと思いますよ。ちなみに「憐れみたまえ」はチェロバージョンやヴァイオリン+オーボエバージョンもお勧めですが、フル・バージョンの生演奏はやはり情景が目に浮かぶ様で素晴らしかったです。是非機会があれば一度聴いてみてください。

中止になった公演、私もベルクの協奏曲があるというのでチェックしていたら来日中止だったんですってね。なつさんも聴けずに残念でした。マタイ受難曲では手堅い演奏でしたが、シャイ―の指揮ではまた違った印象だったと想像します。

ところで、もうすぐ発売される本誌とコミックスが楽しみですね!^^
2008/03/10(月) 00:35 | URL | ろめいん #VWFaYlLU[ 編集]
こんばんは。マタイ受難曲、名前だけは知っていました。
が、そんなに長い曲だということや、物語についても知りませんでした。
もう少しお勉強が必要ですね(笑)

ゲヴァントハウス管弦楽団、実はあたしも聴きに行く予定だったんですが、カペルマイスターの方が急病で、来日が中止になってしまって、公演が中止になっていけませんでした。ちなみにその時のプログラムはベルクのヴァイオリン協奏曲と、マーラーの交響曲1番でした。今年の2月の事です、、、。なんか聞いた事ある名前が出てきて、ちょっとびっくりしました。

オケのほうも歴史があるんですね。
縁があったら聴きにいって見たいです、、、。

2008/03/09(日) 23:18 | URL | なつ #-[ 編集]
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