素人的リサイタル感想:アンジェラ・ヒューイットの平均律クラヴィーア第二夜

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小さい時から何度かチャレンジしては挫折したピアノ。大人になってから再開する人も多いようですが、管理人も時々夢見がてらに検討します。実際は腱鞘炎がひどくてPCのキーボードを打つだけでつらいので、仕事とブログを両方辞めないと無理なんですが、それを棚に上げてピアノを一から復習するとしたら、練習曲には迷わず平均律クラヴィーアを選ぶと思います。とりあえず1巻の1を片手づつ練習して、いつかは両手で弾きたいというのが今のささやかな夢。1巻の中でもフーガは難しいだろうから、1の1で終わりそうですが。(笑)

そんな想像をしてしまうほど、シンプルでありながら奥が深いバッハの平均律クラヴィーア。30年前にボイジャーに乗せられて太陽系の端まで運ばれているグレン・グールドの録音も好きですが、私の一番のお気に入りはアンジェラ・ヒューイットのアルバム。昨年見つけて以来、ずっと聴いています。

先週末はその彼女が弾く平均律のリサイタルに行ってきました。
今シーズンの彼女のメインプログラムは、なんと平均律の第1巻と2巻全曲を二晩で演奏する48曲連続演奏会。初日は都合が合わずにやむなく2日目のみ行ってきましたが、全く飽きることはありませんでした。平均律全曲を順番通りに弾くという、オタッキーなプログラムを楽しんだ夜については続きからどうぞ。

angelah.jpg
今回のBACH WORLD TOURは昨年夏にスタートし、今年の秋にかけて21ヶ国48都市で行われる予定だそうです。4月だけでもアメリカの2都市、ソウル、東京、マカオ、シンガポールとアジアを回り5月はヨーロッパの合間にカナダに戻ったかと思うと月末は南アフリカという忙しさ。東京でも公演の合間に好物のライ麦パン、果物、クエーカーオーツ(これがなくては生きて行けないそうです!)を探しにデパ地下に出没していたそうです。1回2.5~3時間のリサイタルを年間100回も演奏するマラソンのようなツアーを走破するコツは健康的な食生活にもありそうです。^^

そんなヒューイットが愛用するピアノはイタリア製のFAZIOLI(ファツィオーリ)。ワールドツアーでも各地でこのピアノを用意させています。2006年10月に書いた彼女のリサイタル感想でも、このピアノの明るくてクリアな音はバロックに合うと紹介しましたが、今回はその思いをさらに強くしました。ピアノらしい微妙な表現を駆使しつつ、チェンバロのような安定した音もうまく使う彼女のテクニックとFAZIOLIのピアノの両方が合わさっての演奏だと感じました。

また、両手で違うことのできない管理人が三声のフーガを弾くには腕が三本いりますが(あっても無理かも)、ヒューイットは腕どころか、それを制御する脳も余計に持っていそう。指先が完璧にコントロールされているとしか思えないほど、それぞれの声部をはっきりと表しつつ、絶妙なタイミングで重なります。対位法を知らなくても、聴いているだけで体得できそうです。(笑)

ヒューイットが微妙な音色やテンポで曲に変化をつけていく様は、白黒の線画に色を染めつけたように鮮やかです。とはいえ、バッハの世界感を壊すほどの強引さはなく、グールドの破壊的な創造というか、目が覚めるような新しさを目指している訳ではありません。あくまでも正面からバッハを捉えた中での表現なのだと思います。オルガン奏者だった父親の影響もあり、信心深く真面目なバッハ研究の成果として曲の個性を引き出しているため、新鮮でありながら安心して聴けます。

アルバムでも聴いていても零れるような明るさや躍動感の裏にある、解釈は十分伝わりますが、生で聴くとさらに増幅されるようです。ベートーベン?ショパン?と思うほど堂々としていたり、情緒性がにじみ出る瞬間もあり、驚きました。さすがはバッハ先生の正しいカレーですね。(笑)すみませんのだめネタです。

一つ一つのフレーズのなかで納得ゆく音を積み上げ、それでいて曲としての個性を際立たせ、さらに集合体としての平均律をライブ・エンターティメントに仕上げた彼女はさすがだと思います。不思議なもので、演奏を聴いたあとは以前よりそれぞれの曲の個性が際立って聴こえ、以前がなんとも思わなかったフレーズが妙に魅力的思えるようになりました。ヒューイットのお陰で平均律のすべての曲が特別に思えるようになり、またもや平均律のアルバムにはまっております。

もちろん、平均律クラヴィーアはもっとストイックでミニマムが好みという方も多いでしょうが、楽しみながら全曲聴いてみたい方にはヒューイットの演奏はぜひお勧めします。ワールドツアーでは残念ながらもう来日はありませんが、アルバムを通じても魅力は十分に味わえますよ!

ところで最初の写真はリサイタルプログラム、ピアノでのバッハ演奏法のレクチャーDVD(ライブリサイタルつき:バッハのパルティータ、イタリア協奏曲など)、そして平均律のアルバム4枚組です。下の写真のとおり、紙ジャケの裏にはそれぞれの曲の特徴的な小節が書いてあり、分かる人にはどんな曲だかすぐ分かるはず。私は分かりませんが。。(爆)

wellbars.jpg


DVDではバッハの解釈からアーティキュレーションやぺダリングまで教えてくれるそうです。私のような素人には難しいとは思いますが、観るだけで少しは気分が味わえるかも。。なんの気分って、黒木くん(バッハをよく理解している)やのだめ(最初は分からなかったが、今は理解している)の気持ちですよ?!

2008年4月20日
平均律クラヴィーア曲集[第2巻]
24の前奏曲とフーガ
東京オペラシティ

Angela Hewitt
J. S. Bach
Das wohltemperierte Klavier 2 teil
24 Praludien und Fugen BWV870-893

コメント
この記事へのコメント
はーもに~♪様

お疲れのところコメント頂きありがとうございます。
拙い感想ですが、くつろいだと言って頂けると嬉しいです。(*^^*)ホント疲れた時にはバッハは良く利きます。

2-5は私も気をつけて確認しましたが、ヒューイットさんはラッパっぽくない気がしました。私の想像するラッパと違うだけかもしれませんが。この曲もそうですが、フーガで各声部の響きを変えて重ねてゆく様が美しかったです。

DVDでも同じ部分をチェンバロで実際に弾いて、ピアノで弾くといかに可能性が広がるか分かりやすく説明してくれました。ちなみにヴァイオリンも10年やっていたそうで、この人は研究を土台に、ピアノならではのバッハ表現を極めようとしている様です。

マスタークラスでも何も考えずに弾く生徒が多いと嘆いていて、オクレール先生を思い出してしまいました。のだめが平均律を徹底的に教えられた理由が分かったような気もします。

ところで今迷っているのがドイツの新星、マルティン・スタットフェルトのバッハピアノ協奏曲アルバム。合間の小品として平均律の1-8と1-22が入っています。千秋の弾いたピアノ協奏曲1番などがメインですが、それよりマルチェッロのオーボエ協奏曲のトランスクリプションが気になったりして。(笑)またまた偏ったCDの集め方になりそうです。

最近は急に暑くなったりして調子を崩しやすいので、はーもに~♪様も体調には気をつけてくださいね!
2008/05/01(木) 00:35 | URL | ろめいん #VWFaYlLU[ 編集]
なんだかこのところ、やたら忙しくて、太陽をみると動悸がムネムネなほどヘロヘロでしたが、ろめいん様のリサイタル感想を読ませていただいて、ほっとくつろぎました。
久々に我が家のグールドのピアノ版と、レオン・ベルベンのチェンバロ版を引っ張りだして聴いています。
ピアノとチェンバロだと、音の出し方も表現方法(チェンバロ、音の強弱つけられないし…)も異なるので、まったく違った趣で、二度おいしいですね。^m^
リュカが、2巻の5番を「天使のラッパがぷっぷーって鳴ってるみたい」って言っていたの、ピアノだと、「なるほど」って思うけど、ベルベンのチェンバロだとテンポが速いせいもあって、ラッパには聴こえない、むしろ華麗で威厳のある王侯貴族のように思えたり…(って、やっぱり「のだめ」ネタ…^^;)

レオン・ベルベンのチェンバロの演奏は、お安いバッハ全集に入っているものですが、とても優雅で新鮮で、格式ばらず、とても心地良く聴けて、気に入ってます。

バッハの時代には無かったピアノだと、チェンバロではできない微妙なニュアンスや色彩、表現の幅が飛躍的に深く、広いので、ピアニストが全霊をかけてバッハの世界を再構築しているのが伝わり、聴くほうもつい、入れ込んでしまいます。

ピアノとチェンバロと、それぞれの持ち味を意識されているという、今が旬のヒューイットさんのバッハ、ぜひ聴いてみたいです。
2008/04/30(水) 11:06 | URL | はーもに~♪ #CFBCjnlI[ 編集]
リサイタルに行って、DVDを見て、平均律をさらに愉しく聴けるようになりました。退屈な指の体操に陥りがちな作品を、一つ一つの音を膨大な選択肢の中から最適なものを選び、「聴かせる」プログラムにしているのがすごいです。
それでいて、バッハの枠を壊さないところは、同じカナダ出身のグールドとは違います。彼は早弾きで聴いている方が転びそうな演奏もしますから。リヒテルの平均律は聴いたことがないので、ロマンチックな演奏も一度聴いてみたいです。
2008/04/30(水) 01:01 | URL | ろめいん #VWFaYlLU[ 編集]
ろめいんさん、良いコンサートだったようですね。
ヒューイットのバッハ、今が旬だと言われています。
「微妙な音色やテンポで曲に変化をつけていく様は、白黒の線画に色を染めつけたように鮮やかで・・・あくまでも正面からバッハを捉えた中での表現なのだと思います」とお書きになっている箇所を読んで、私も聞いてみたくなりました。
私は今まで、リヒテルのややロマンティックな演奏のレコードで聴いてきましたので、きっと新鮮に聞こえると思います。
2008/04/29(火) 23:34 | URL | nomomania #-[ 編集]
レベッカさん、こんばんは!

毎度素人のつぶやき的な感想ですが、少しでも楽しいと言って頂けると嬉しいです。

いや~、ワールドツアーの予定を見ると、音楽家ってアスリートみたいですよね。今年の一月にお母さんを亡くされたそうですが、ツアー予定は変えずにこなしたとのこと。いろんな意味で大変な精神力だと思います。。

DVDは撮影場所がなんとFAZIOLIのピアノ工場でした!説明は小さなフレーズや短い曲の演奏と交互ですし、弦楽器のボウイングを真似るという項ではチェロので同じフレーズを弾くので、目と耳で理解できます。ヒューイットさんのバッハにかける情熱が伝わり、観ていて楽しいです。

バッハの時代の演奏者は作曲の意図を理解している事が前提で、だから楽譜に細かい指示がなく、だからこそ基本の勉強は必須で、その上でピアノでの良い演奏とはなにか常に考えなければならないんですね。のだめが平均律を徹底的にやらされた意味が分かるような気がします。

私はこれを見て、1の1も一生無理だとあきらめました。^^;
2008/04/26(土) 00:12 | URL | ろめいん #VWFaYlLU[ 編集]
こんにちはーろめいんさんv
平均律全曲!そして過酷なワールドツアーの日程…!二日目、第2巻だけとはいえ、素敵な時間を過ごされたろめいんさんがとても羨ましいです~(^^*)1巻の1とはいえ、平均律というのはたとえ楽譜は辿れても「弾きこなす」のはものすごく難しい印象があります。不勉強ながら、私はアンジェラ・ヒューイットさんを存じ上げなかったのですが、レポを読んでいるだけで私までライブで聴いた気分になってしまいました(笑)
それと、紹介いただいてたDVD!演奏法のレクチャーDVDなんてあるんですね~。非常に興味がわきました。

いつもいつもリサイタルレポ、楽しませていただいてありがとうございます!それではv
2008/04/25(金) 21:23 | URL | レベッカ #9xsPF1TE[ 編集]
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