心を揺さぶる音楽:小澤X新日フィル「悲愴」と「オーボエ協奏曲」

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今週の東京は雨が多く、肌寒かったですね。天候のせいか、疲れがたまっているせいか、心と体の抵抗力が弱まっている様です。そんな時には音楽がより深く沁みるような気がします。

モーツアルトのディヴェルティメントとオーボエ・コンチェルトにチャイコフスキーの悲愴。今回のコンサートはメジャーな曲ばかりを集めて、サントリーホールで、世界の小澤で、という贅沢な企画。メジャーな演目・演奏者が揃っていると、却って迷ってしまい、決心した頃には売り切れる。。というパターンが常ですが、今回は見つけたとたんに速攻でゲット。一度は生で聴きたかった小澤征爾の指揮と古部賢一のオーボエ、その上演目は聴き込んでいる曲ばかりというプログラムを見つけた幸運に感謝です。一晩限りのこの演目は即日完売で、客席も当然一杯でした。

開演を席で待つ間に胸が高鳴っているのは、いつもの駆け込み入場のせいだけではありません。
普通は一曲目が終われば静まるところが、小澤マジックにどんどん揺り動かされた夜については続きからどうぞ。

ozawa0516.jpg
写真はパンフレットとサイトウキネンの悲愴と古部さんのイタリアンバロック・アルバムです。どちらも同じ曲のCDをすでに持っていますが、良い演奏を聴くとやっぱり欲しくなり、どんどん増えてしまいます。オーボエのCDコレクションはそこらのクラシックコーナーより厚みがありそうだし。(^^;

ところで、小澤さんは新日本フィルの「桂冠名誉指揮者」(Laureate conductor)とのこと。この場合の桂冠は「とっても名誉ある」という意味みたいです。^^ 新日フィルがロストロポーヴィチに贈った称号、「フレンド・オフ・セイジ」にも突っ込み所がありそうですが、それはそれとして。(笑)

指揮棒を使わない小澤さんの指揮はビデオなどでもおなじみですが、実際に見るとやはり個性的な指揮ぶりに驚かされます。体全体を大きく揺らしたと思ったら、指先のちょっとした動きで合図をしたり、時々脱力したり、ヴァイオリン側からコントラバス側にくるっと向きなおって指示を出す様子には見とれてしまいます。膝をやや折って重心を下で長節つ、上半身の動きを自由する独特の姿に東西のスタイルの融合を感じました。音だけではなく、オーケストラのエネルギーの流れも自在にコントロールするようにして音楽を紡いで行く姿に、望む音色を引き出す魔法を習得してこそ、マエストロなのだと納得。ドラマチックな表現はもちろんの事ですが、小澤さんの創る「静けさ」が最も印象的な演奏会でした。

モーツアルトのディヴェルティメントの中でもK136は一番良く聴く曲。生演奏では弦楽四重奏で聴くことが多いので、弦楽5部での演奏はとても楽しみでした。小さめの編成のせいか、コンマスの崔文洙さんの音が綺麗に響き、メリハリがあって楽しい演奏でした。この活き活きとした曲がBGMなどで聞き流している曲と同じとは思えないほどです。

オーボエ・コンチェルトのソリスト、古部さんは藝大在学中からこのオケの主席を務めていたそうです。それだけでマルレの黒木くんを思い出してしまう管理人は重症の黒木欠乏症。(^^;いつもチューニングで音を出している仲間がソロを吹くと、支えるオケも気合が入るだろうな。R☆Sでの黒木くんのコンチェルトもこんな雰囲気?などと、始まる前から妄想がだだ漏れ状態。(笑) 管理人の脳内年表では、黒木くんは卒業後ドイツのオケで経験を積むことになっているので、そのあとの演奏はこんな感じかなとイメージを重ねてしまいます。

念の為に解説すると、この曲はのだめカンタービレで有名になった訳ではもちろんなく、オーボエのオーディションでは必ず吹かせるというお約束の曲です。テクニックが難しいだけでなく、フルート・バージョンでも有名な通り軽快で美しい協奏曲です。古部さんのオーボエは美音の追及やテクニックに走ることなく曲全体の表現を重視しているようで、柔らかくて明るい音色が疲れた神経に心地よく沁みます。汗をふきふき熱演する、古部さんの楽器を調整する優しげな眼差しと手つきに、一瞬オーボエになりたいと思っちゃいましたよ。そう、重症です。(笑)

シーンと静まった中、カデンツァを一人で演奏するソリストのプレッシャーに共鳴して胸が一杯になってしまいましたが、そこは古部さん。危ういところなく聴かせどころを抑えた演奏で、大満足です。小澤さんはオケやソリストとコミュニケーションを取りながら、音量と流れを微妙にコントロールして、爽やかで優しいモーツアルトを届けてくれました。演奏後、オケからソリストに贈られる温かい拍手や誇らしげな目線が客席にもよく分かります。

そしてメインの悲愴ですが、これも予想を上回り素敵な演奏でした。ドラマチックでありながら悲劇的にならず、コントロールは利きつつも淡々とせず、このバランスはさすが小澤さん。また、聞き終わった途端にもう一度聴きたいと思うほど、今まで聴いたどの演奏とも違います。買って帰った本人指揮のCD(95年の録音)とも違う、円熟した今のマエストロ・オザワならでは悲愴でした。

ファゴットをはじめとした木管の暖かくて柔らかい音、奥行きを感じさせる豊かなホルン、乱れないヴァイオリンに、肉感的なヴァイブを送ってくるコントラバスとチェロ、不安を掻き立てるティンパニー。新日フィルってこんなに上手だったっけ?と思わせるのが名指揮者なのでしょうね。第二楽章の浮遊感が心地よく、他の演奏と比較する気持ちがすっかり消えて、オーケストラが描くチャイコフスキーの傑作に身をゆだねることにしました。

第三楽章ではテンションを積み上げつつも決して流されず、爆発的に終わりますが、曲を良く知っているお客さんばかりだったようでフライング拍手は湧かずホッとします。小澤さんは楽章の間でもそのエネルギーを休めずに、一瞬の間のあとすぐに第4楽章に入り、出だしで吐き出してからすーっと引きます。こういったテンションの切り替えは初めてですが、見事でした。最後は内臓に響くような低音に文字通り揺さぶられながら、オケでどうやって出すんだと思うほど小さな音から、更に真空にたどりつくようにして終わります。

十分な静寂と余韻の後に沸き起こる拍手は暖かく、小澤さんとオーケストラへの感謝の気持ちが伝わります。退場のたびに段差を飛び越えて袖に向かう小澤さんの元気な様子が嬉しかったのは、聴衆の共通した気持ちだったのでしょう。

一週間の神経過敏・お疲れモードが吹き飛んだとまでは言いませんが、心も体も充電されて本当に行ってよかったと思うコンサートでした。


新日本フィルハーモニー交響楽団特別演奏会
曲目
モーツァルト :ディヴェルティメント ニ長調 K136
:オーボエ協奏曲 ハ長調 K314
チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調 op.74 「悲愴」

指揮: 小澤征爾
オーボエ: 古部賢一

小澤さん指揮のディヴェルティメントはこちらで聴けます
http://www.youtube.com/watch?v=pph8EIsc0q0

コメント
この記事へのコメント
コンサート当日は拍手の合間も跳ねるように袖に向かい、元気さをアピールされていたので、大阪・三重の公演が中止になったと聞き、驚きました。

チケットを取る時に、またいつ聴けるか分からない組み合わせだと思っていたのですが、聴くことができてラッキーでした。巨匠とか、何度も演奏している有名曲だとかを忘れてしまうほど真摯に表現しているのが印象的でした。

フィデリオ、楽しみですね。無事回復されることを祈ります。
2008/05/24(土) 21:11 | URL | ろめいん #VWFaYlLU[ 編集]
春分の日にNHKBSで放映された「ベルリン・フィル125周年記念特番」で、小澤さんがカラヤン生誕100周年記念コンサートで指揮した悲愴を視聴しましたが、師に全霊を込めて捧げるのが伝わる感動的な演奏でした。
その小澤さんがこの秋ヴィーン国立歌劇場を率いてフィデリオを指揮する公演の切符を買っているのですが、、師のカラヤンと同じく椎間板ヘルニアを抱え、治療に専念するため暫らく休演なさるとのニュースが気掛かりです。
元気に復帰してくれるよう祈るばかりです。
2008/05/24(土) 13:55 | URL | nomomania #-[ 編集]
ppppi-185からffff♪(笑)までの音量の幅はオーディオルームでもない限りCDでは絶対に味わえないですよね。また、内臓が振動するような低音の響きもウーハーつきホームシアターでもない限りたぶん無理ですよね。

CDでもよく聴きますが、やはりチャイコフスキーを堪能するのは生演奏だといつも思います。ヘッドホンでpppを聞き取ろうと思って、調節を忘れるとfffで耳が壊れそうになりますので。(何度も経験済み;)

千秋はまだ魔法使いの修行中ですが、今回、小澤さんは魔法使いの大先生だなーと実感しました。のだめでも悲愴が出てくるとよいですね。

「チャイコフスキーは悲しくてもそれを言うことができなかったんだよ」はなにかキーワードになると思います。ヴィエ先生のチケットを渡したのも父だし、はーもに~♪様の読み通り、なにかありそう。

大穴予想番外編:「今明かされる父と子の真実。雅之の隠された謎とは!来週ののだめに乞うご期待!!」・・・
おあとがよろしいようで~♪
2008/05/21(水) 00:04 | URL | ろめいん #VWFaYlLU[ 編集]
心ゆさぶられるメランコリックで美しい旋律、特に第4楽章の、静かな低音の弦と息を止めるような「静寂」の繰り返し…消え入るような最期が、もう、胸わしづかみ!で、たまりませんよね。

小澤氏の、今だからできる円熟の「悲愴」、生だからこそ際立つ「静けさ」、良いものを聴かれたようで、羨ましいかぎりです。

音楽への姿勢はいつも真摯で、揺れ動くことのない真一君が、唯一、音楽へのスタンスを崩した相手、千秋雅之氏。
のだめちゃんに、「千秋先輩の目標は、お父さんとの共演だったんですね」と、大きなショックを与えた人…
「悲愴」は、その雅之氏との最初で最後のレッスンの曲でもあり、ヴィエラ先生が総譜を与えた曲でもあり…やっぱり、「のだめ」で、取り上げて欲しいなぁ!…って、やっぱり「のだめ」ネタかい!ww
2008/05/20(火) 18:04 | URL | はーもに~♪ #CFBCjnlI[ 編集]
h様、コメントありがとうございます!

一晩だけかと思っていたら、そちらでも演奏会されていたんですね。見事ゲットされ、おめでとうございます。

黒木くんビジョン、私だけでないと聞いてちょっと安心しました。あの優しいオーボエの音には錯覚させられますよね。いろんな意味で夢のような一夜でした。^^

お時間がある時に、また遊びにいらしてくださいね。
2008/05/18(日) 22:07 | URL | ろめいん #VWFaYlLU[ 編集]
なつさん

同じ曲ばかり聴くと好みが偏るのではと思いましたが、何度も聴いているからこそ微妙な演奏の差に気がついたり、安心して聴ける事も実感しました。好きなものは、好き!ということで。(笑)

チャイコフスキーの音楽は静寂から爆発までのダイナミクスの幅で感情を動かすと思っています。CDではなかなか聞き取れないので、折角のコンサートではあの真空のような静けさ待ち望んでしまいます。とはいえ、音楽祭などでは当然フライング拍手も沸くし、指揮者もオケも想定しているようですね。^^

20万ヒットに応援頂きありがとうございます。^^
ブログパーツ、遊んで頂けて嬉しいです♪
2008/05/18(日) 22:00 | URL | ろめいん #VWFaYlLU[ 編集]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2008/05/18(日) 13:24 | | #[ 編集]
素敵なコンサートだったんですね。ろめいんさんの感想を読んで、コンサト超ど素人のあたしにも、なんとなく雰囲気が伝わってきて楽しくなりました。

やっぱり、ろめいんさんは、色々お詳しくてらっしゃる、と関心でした。

あたしも修行をつむぞ~と思っているところです。
フライング拍手、、、。もぎぎせんせいの本を読んで
「これだけはやらないようにしよう」と固く心に誓ったあたしです(笑)

あ、20万ヒットおめでとうございます。
万華鏡&ピアニカ楽しかったデス♪
2008/05/18(日) 11:32 | URL | なつ #-[ 編集]
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